“俺様”大家の王国
「……おい、聞いてたか今の」
「何をです?
……ああ、ここの天ぷらは美味しいですねぇ」
「馬鹿、それじゃねえよ……見付けた、見付けたぜ遂に!」
男は興奮した余り、湯呑を肘で倒した。
幸い、空だったのでどこも汚さずに済んだ。
「あーあー、何やってんですか岩井さん」
「それどころじゃねえってんだよ……
あー、何で最初のうちに気付かなかったんだ」
かぼちゃの天ぷらを、
にこにこしながら頬張っていた青年は、きょとんとした。
「だから、何がです?」