“俺様”大家の王国
「確かにそうだよ畜生! そっちうまそうだな!
しかも俺の蕎麦来るの遅いしよ……じゃねえ。
今大事なのはだなあ、あの子だよ。
ほら、見てみろよ」
「何ですか急に。
食事の時に、人の事じろじろ見ちゃいけないんですよ?」
「この野郎……。
……もういい。簡潔に言う。
この前、紅原綾子に極秘の依頼を仰せ付かっただろ?
娘を探せ、っていう」
「ああ、まだ見付かりませんねえ」
「だからな……」
岩井は、がっくりと頭を垂れた。
もう、何も言いたくはなかったが、ほとんど惰性のように、
何度目かになる質問を、彼に投げかけた。
「……小林。
お前、探偵辞めた方がいいんじゃないか?」