“俺様”大家の王国
「………っ」
咄嗟に、言葉が出なかった。
「どうせなら、うんとなじってやれば良かったんだ……
最低一発でもぶん殴って、自分がどれだけ酷い事をしたのか、
分からせてやれば良かったんだ……」
もし、その時の滝野が私なら、きっとそうした。
けれど、滝野自身はしなかった。
それが、大人の女なのだと痛感した。
私にはとても、真似出来ない。
「とりあえず、起きて……」
私は滝野を宥めながら、彼女の下から這い出た。
「……大変だったね。とっても辛かったんだよね」
『受容』、『共感』……。
一年前に、詰め込んだカウンセリング用語がちらりと蘇り、自分が嫌になる。
だからここからは、私の言葉だ。