“俺様”大家の王国
翌朝の事だった。
「……それは、どういう意味ですか?」
「どうも何も、今言った通りだ。
今回の仕事は、打ち切りになった」
突然の所長の言葉に、岩井は驚きと憤りを隠せなかった。
「依頼人の紅原が、そう言ったんですか?」
「いや、違う……」
「じゃあ、誰が」
詰め寄らんばかりに岩井が迫ると、
所長はきまり悪げに余所を向いた。
「お前の、知らなくていい事だ。
とにかく、もう緒方奈央を追うな。
資料も書類も、全て破棄だ」
「依頼人には、どう説明するつもりですか」
「謝るしかない」
「探偵事務所は信用第一じゃないですか!
とんでもない事ですよ!」