“俺様”大家の王国
その時小林が、子犬に構いながら、遅れて出社した。
「おはよーございます」
「――下手したら事務所が潰れますよ!
いいんですか!?」
「……朝からヘビーな話題だな」
小林は聞かなかった事にして、
子犬のミルクの為に台所に消えた。
「……逆だ。
このまま捜索を続ける方が、危険なんだ」
所長は、諭すように言った。
「危険って何ですか。
今回はかなり苦労したし、
所長だって変装までして大学に行ったじゃないですか。
やっと見付けて、後は報告をまとめるばかりだってのに……
引き下がるなんて、嫌です」
正義感と責任感の強い彼にとって、許し難い事だった。
そのくせ、頭ではもう理解していた。
だから余計に、その思いが行き場をなくしていた。