“俺様”大家の王国
(やっぱりな……)
電話の主は、いつも出ない。
仕方なく、メッセージを残す。
「……もしもし、サク?
俺だけど……前のマンションに、絶対近寄るなよ」
半ば早口にそれだけ言うと、録音終了の音声が流れて来た。
不安は残るが、まあこれでいいとする。
打てる手は、全て打った。
後は、奈央が無事に戻ってくるのを待つのみだ。
早くも、彼女の料理が恋しくなっていた。
いや、しかしそれ以上に……。
奈央には、そばにいて欲しかった。
だからそうしようと、彼はもう密かに決めていた。