“俺様”大家の王国
「はは、何か安心したら気が抜けちゃって……」
十郎さんは床で大の字になって、へらへら笑っていた。
「ずっと体調悪かったんですか?」
「いいえー、ついさっきからですよ……
真夜中で電車無くて、ずっと歩いてきたもんで」
「歩いてきたって……パレスからですか!? あの距離を!?」
「いやー、頑張れば何とかなるもんですね……」
「それは無茶っていうんです!
しかもこんな薄着で……風邪引かない方がおかしいです!」
私は本気で怒っていたのだが、十郎さんはにこにこ笑っていた。
……にこにこ、というよりは『にやにや』に近かったが。
(やばい、顔の筋肉が弛んでる……)