“俺様”大家の王国



「はは、何か安心したら気が抜けちゃって……」
 
十郎さんは床で大の字になって、へらへら笑っていた。

「ずっと体調悪かったんですか?」

「いいえー、ついさっきからですよ……

真夜中で電車無くて、ずっと歩いてきたもんで」

「歩いてきたって……パレスからですか!? あの距離を!?」

「いやー、頑張れば何とかなるもんですね……」

「それは無茶っていうんです! 

しかもこんな薄着で……風邪引かない方がおかしいです!」
 
私は本気で怒っていたのだが、十郎さんはにこにこ笑っていた。

……にこにこ、というよりは『にやにや』に近かったが。

(やばい、顔の筋肉が弛んでる……)



< 257 / 534 >

この作品をシェア

pagetop