“俺様”大家の王国
「ぎゃややややや……!」
「さっき『はい』って言ったじゃないですか!」
「それは訊き返しただけで……
ぎゃやややややや……うぐっ……ゲホゲホ!」
「ほーら、そんな変な声出してるからですよ!
もうすぐ寝室ですから起きて下さい!」
荒療治(?)が利いたのか、十郎さんは今度は大人しく起き上がってくれた。
そのまま、のそのそとベッドに潜り込んでいく。
呼吸が整ってから、彼はすっかりガラガラになった声で言った。
「奈央さん……力持ちですね……
その細い腕のどこに、こんな力があるんですか」
「学生なめないで下さい。
毎日どんだけ重い鞄持ってると……って、あーっ!」
時計の針は、無常にも私が遅刻確実だと示していた。