“俺様”大家の王国
このくらい、出して処分すればいいものを……。
十郎さんは、ちょっとズボラなのかもしれない。
(まあ、それも今はいいとして)
初挑戦だったし、味見が出来ないので不安だったが、
とりあえずそれらしいものを作り、マグカップに注いで、
私は寝室のドアをノックした。
「十郎さん、入りますよ?」
「あ、ちょっ……!」
「え?」
何か慌てたような声が聞こえたが、私は既にドアを開けていた。
十郎さんは意識がはっきりしているようだったが、
何だかさっきより様子がおかしかった。
変に布団がずれているし……。
「えっと、卵酒作ってきました。冷めないうちにどうぞ」
手渡そうとしたが、彼は受け取ってくれなかった。
首まですっぽり布団を被って、出て来ない。