“俺様”大家の王国



ふと、祖母と祖父の顔が脳裏を掠めた。

……でも駄目だ。今もし母に見付かったら、何もかも終わってしまう。

その為には、ドラマの告知が期限切れ……そう、企画倒れという時効を迎えるまで、

私は捕まってはいけないのだ。


(母さんは……私に何をさせたいんだろう)
 

時々不意に、あの日にあった事は全部夢だったんじゃないのだろうか、

と思いたくなる事がある。

……しかし、それが事実だったというのは、

プロにカットされた髪が充分に証明している。

少しだけ伸びたかもしれないが、それまで自分で適当に鋏を走らせて切っていたのとは、大違いだ。
 

他の誰にも気付かれないように、そっとシャワーを浴びて着替えてから、

私は明日の用意をした。

教科書を、全部入れ替えるのだ。

(明日はまた解剖か……)
 
今、その為にラットを学校で飼育していた。
 
アルビノのウィスター系ラットで、

六つに仕切られたケージの中で、

私達が調製した餌をもりもり食べながら、成長している。



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