“俺様”大家の王国
 


物音がして、はっとした。
 
誰かが起きたのだ。

私が荷物置き場にしているこの部屋まで、歩いて来るようだった。
 
ややあって、ドアにノックがあった。

「奈央さん……まだ、起きてますか?」

「十郎さん……どうしたんですか?」
 
ドアを開けると、やはり少し赤い顔をした十郎さんが、立っていた。

もっとも、これが熱の所為なのか酒の所為なのかは分からないけど。

(ていうか、病人がアルコール摂取って、考えてみたらまずかったよなあ……)

「えっと、今日はその……色々すみませんでした。

苛々しますよね、こういうのって……」
 
そう言うと、十郎さんは軽くお辞儀をした。

慌てて私は、それを止める。

「そんな、謝らないで下さい。

私だって、変な事言いましたし……本当なら、

私が文句を言う方が、お門違いだったんですよ。

匿って貰いながら、我儘言うなんて許されない事なんですから……」



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