“俺様”大家の王国
「今から、僕がいいって言うまで、目を瞑って下さい」
「?」
訳が分からないまま、とりあえず言われたとおりにしてみる。
廊下は真っ暗だったので、目を閉じると本当に何も分からなくなった。
でも、十郎さんがついっと私に近付いて、頬に触れたのは分かった。
「え、ちょっ……何……」
「あ、まだ目を開けちゃ駄目ですよ」
「で、でも……あの、何するんですか……?」
私の問いに、十郎さんは耳元で優しく呟いた。
「……全部、言わせる気ですか?」
何だか、変な予感がした。
しかも今の距離には、覚えがある。
あの、満員電車の中の……。
「………んっ」
覚悟が出来ていないうちに、あの時のように再び唇は触れ合った。