“俺様”大家の王国
『いざという時、男は弱い。女は強い』
というような言葉を思い出した。
とりあえず今は、確実に『いざという時』だろう。
緒方さんは皆が見守る中、果敢に軍手を二重にはめ、ケージからラットを慎重に掴み出し……。
………。
むぎゅっ。
「――ヂヂィ~!!」
「わあああああ!」
ラットは、突然暴れ出した。
同時に、緒方さんも悲鳴を上げてラットを振り回し始めた。
緊張して、力が入り過ぎたのだ。
「ちょ、緒方さんっ、もっと優しく持って!」
「無理ー! 嫌ああぁっ、生きてるー! 柔らかいぃーっ!」
「当たり前でしょっ!」
怖がってる割には奇妙な事を口走りながら、パニック状態に陥った緒方さんは、慌ててラットをエーテルに放り込んだ。
が、ラットが負けじと蓋を閉める寸前に、側面をよじ登ってきたもんだから、
彼女は思い切りラットの頭を「ぎゅむっ」と蓋に挟んでしまった。
ラットの顔が、迷惑そうに歪む。
「きゃああああっ!」
もう大絶叫だ。
先生なんて、後ろでお腹を抱えて笑っていた。
さっき、「僕は過去に一度だけラットに噛まれて、その晩ショックで眠れなかったんですよ……」なんて言ってたくせに。