“俺様”大家の王国
ミエロは、勝手にべらべら話し始めた。
「先に言っとくけど、俺はただ今絶賛☆スランプ状態だ。
そして、その原因はあのCDだ」
「CDって、あのアルバムの……?」
私が友達に借りた、ヒーリングミュージック。
「そうだ。『TRISTITIA』と『REPARATIO』……
これらはラテン語で『悲しみ』と『償い』って意味で……っていうのは、今はいいか。
歌詞が入ってるのは、これだけなんだけどな、それを歌ってたのが……」
「確か、『フラワーガール』の『佐竹れいの』でしたよね」
フラワーガールというのは、モーニング娘やAKB48みたいな、アイドルグループのことだ。
要するに、ありふれた可愛い女の子達の集団、という事で、だけどそのブームが終わるまでは、事務所は総力を挙げて彼女達の世話をする。
元々、『TRISTITIA』と『REPARATIO』には歌詞を入れるつもりだったらしい。
歌い手が見付からなければ、歌詞カードだけに詞が刻まれたインスト曲にすると。
しかしミエロは、プロデューサーの判断で、
勝手にその話がアイドルに流れた事に、猛烈に腹を立てていたのだった。