“俺様”大家の王国



「あーもう! 落ち着けー!」
 
十郎大暴走だった。
 
しかし、奈央にはもう本気で喚く大人をみっともないと思う余裕は無く、ひたすら自らの身の潔白を訴え続けた。

 
ちなみに、喧嘩腰の話し合いには三人の労力と多大な時間を要した。

熱い議論の途中に夕食の休憩をはさみ、このまま穏便に解決するかと思いきや、

ミエロがまたいらない事を口走って話を蒸し返した為。


結局、この誤解が解けたのは深夜になってからだった。


「何て言うかもう……お疲れさまでした」
 
ミエロが『今から曲を思い出すのにピアノの部屋で徹夜する』と言ってリビングから出て行き、

拓海が『今日はカラオケで飲み明かす』というメールをしてきたので、必然的に奈央は十郎と二人きりになっていた。


「あー……でも、これで安心しました」
 
「何がですか?」

奈央は、ミルクのたっぷり入った紅茶のカップを十郎に手渡した。

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