“俺様”大家の王国
 


十郎は、受け取りながら奈央の顔をちらりと見上げた。

「んー、こっちの話です」

「そうですか……」
 
奈央は十郎からちょっと離れて、ソファーの隣に座った。

カップのミルクティーに口を付ける。こっちは砂糖もたっぷりだ。

「奈央さん」

「はい?」

「怒ってないんですか?」

「怒ってますよ」
 
奈央は、ぶすっとした表情で言った。

「あんな事いきなりされて……びっくりしたし……」

「びっくりしただけですか?」
 
十郎が、にこりと笑う。
 
うわ、腹黒だ!
 
奈央は「むぅ……」と唸った。

「とにかく、怒ってるんです」

「すみませんでした」


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