“俺様”大家の王国
「……十郎さん」
「何ですか?」
「私、明日実家に帰ります」
「!」
「冬物を取りに……厚手の服を、そろそろ用意したいので」
一瞬ほっと胸を撫で下ろした十郎だったが、
「ただ……今度……ああいう事をしたら、私本当にパレスから出ていきますね」
「!!」
「それで、次に会うのは…………法廷です」
奈央はそこまで冷静に言い切ってから、ふっと(言えた……!)顔を綻ばせた。
その表情の変化をまじまじと見てしまった十郎は、
ミルクティーを顔面から被ってびしょ濡れでべたべたのくせに、
またもそのギャップに胸を騒がせて、絶対諦めるもんかと密かににやついた。