“俺様”大家の王国
「何を吠える事があるんだしばちゃんよ……あ、そうか。
初めて会うお兄さんが珍しいんだね~。
よーし抱っこして貰おうか!
なーにお前は可愛いから、拒否る人はきっといない……♪」
「寄るなあっ!
た、頼むからその生き物を俺に近付けないでくれ!
後生だから!」
拓海は、恥も外聞もなく懇願した。
しかし、小林は『理解できない』というふうに近寄った。
「やだやだやだやだ!
だーからやめろーっ!
俺嫌いなんだよ犬が!
出てってくれーッ!」
「わーお、可哀想な人。
この魅力が分からないなんて……」
小林はううむと唸りながら、大人しく出て行こうとしたが、途中で思いとどまった。
「あ……でもとりあえずこれって良い機会ですよね」
「は? な、何の……」
「確か隣の人とは仲良くしろってどっかの教祖も言ってたしなあ……」
「キリストか? だとしたら意味が違うんじゃ……っていうかちょっと待て、お前今何を企んでる……」
「……よし。
これも隣人の務めですよね?
この際だから協力しますよ!
犬嫌い治し♪」