“俺様”大家の王国



「あれ? お兄さーん……? 

駄目だ、寝ちゃった。


……そーれ! しばちゃん今のうちだぞ。

一刻も早くお兄さんの犬嫌いが治るように、お兄さんと出来るだけスキンシップをはかるんだ!」
 

小林は、ここぞとばかりに、思い切りしばちゃんを遊ばせた。
 
そして、しばちゃんが飽きた頃にようやく引き上げた。

「お兄さーん、それじゃあ気が済んだんで、俺はこれで帰りますねー♪ 

あ、床で寝ると風邪引きますよー……はい、さよなら!」
 
その数時間後、意識を取り戻し、

自分の置かれた状況を犬の毛まみれな服と部屋を見て悟った拓海は、

泣きながら風呂に入り、爪を切り、再び風呂に入り、

洗濯機をフル稼働させて部屋中のものを洗濯し、部屋中を猛掃除し、

仕上げに部屋中を除菌スプレーで消毒してから、塩をまいた。

二日酔いだ何だと言っているような精神の余裕は無かった。
 

そして祈った。

今すぐあの憎き犬を連れた悪魔がパレスから出ていきますように、と。
 


うちは当分、隣人お断りだ……。


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