“俺様”大家の王国
出されたお茶を啜りながら笑うと、急にホームシックに似た切なさが襲ってきた。
もう、ここに帰ってきてしまってもいいんじゃないのか。そんな気になる。
祖母は、とてもにこにこしていた。
……余計に、気持がくじけそうになる。
それから私は、祖母に乞われるままに、ここ最近の事を話した。
(探偵に追われないように十郎さんのマンションに移った事や、そこで起こった大変よろしくないエピソードは勿論省いて)
「そういえば……あれから、母さんは何か言って来た?
あの性格からして、簡単に引き下がるとは思えないんだけど……」
私がチョコレートの包み紙を開けながら尋ねると、祖母はうんうんと頷いた。
「大丈夫よ。ちゃんと追っ払ったから。奈央ちゃんが心配する事はないわ」
「そう、追っ払ってくれたの……」
まるで動物を相手にしているような物言いがちょっとおかしかったけど、ほっとした。
私は、絶対母に見付かりたくない。
ここまで来てしまったのだから、徹底的に逃げ切りたいのだ。
やっぱり母が折れるまで、私は諦めないつもりだった。