“俺様”大家の王国
 


佐和は、長いスカートを両手でたくし上げて、元気良く廊下へ向かった。
 
すると、それを誤解した他の子達までもが、

「今度はあっちで撮ろう」と、部屋から出て行ってしまった。


ほどなくして、


「記念撮影なら任せて!」

「うわ、何で委員長一眼レフ構えてんの!」

という大きな声が聞こえてきた。
 

教室には、ぽかんとした私と、鏡の中の自分を凝視している女の子が一人、残された。


美人なロングヘアーの子だ。

確か名前は、久遠春希ちゃん、っていったっけ……。

あんまり喋った事ない子だったので、ちょっと気まずい。


春希ちゃんは、良く言えばミステリアスな女の子だ。

悪く言えば、何を考えているのか分からない子。

前にある男子が、「久遠さんは可愛いのに中身が残念な子だよ」と言っていた事がある……。



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