“俺様”大家の王国
 


ミエロを軽くあしらい、作業を進めていると、

そのうち風呂掃除を終えた小林君が、私のまわりをうろちょろし始めた。

もう、しばちゃんも自由に部屋の中を走り回っている。


「何作ってるのー?」

「適当です」

「……ん?」

「肉と、野菜を使って、適当に味付けをしています。

名前なんて、ありませんよ」

「……冷たいなあ。

もしかして、怒ってる?」


「怒ってますよ」

「誰に?」

 
訊かれて一瞬、すぐに答えが出なかった。

「……あなたにも」

「僕に『も』?」

「………」
 
つい、口走ってしまった。


「他には、誰に?」

「……答えたくありません」

「もしかして、彼氏と喧嘩中?」
 
ぎくりとなった。
 

徐々に自分の顔が赤くなっていくのが分かったが、落ち着け、落ち着け、と呼吸を整える。


だって、だって、……私には『彼氏』なんて、いないもん……。


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