“俺様”大家の王国
「――おい、新入り。
その辺にしておけ」
いよいよ答えに行き詰っていると、ミエロが助け船を出してくれた。
「あんまり勢い付いていくと、嫌われるぞ」
「ちぇっ……しょうがないなー」
すると、小林君はさっさと諦めて、しばちゃんを呼び寄せた。
「しばちゃーん、おいで。帰ろう」
「きゃん」
お利口なしばちゃんは、きちんと返事をして小林君に抱き上げられた。
「じゃあね、二人とも……。
あ、そうそう。
今のは、悪気も深い意味も無い話だから、あんまり悩まないでね。ばいばい」
「さよなら……」
小林君は、しばちゃんの右前足を取って、「ばいばい」に合わせて振り、部屋から出て行った。
ミエロは、小林君にきちんとさよならを言わなかった。
怒っているのかもしれなかった。
彼自身、そう嫌がらせを受けたわけでもないだろうに。
(ああ、そうか。
彼は小林君のせいで、床掃除してるんだった……)