“俺様”大家の王国
 


彼が、私に気を遣ってくれたのだと気付いたのは、ミエロが掃除を追えて、部屋から出て行った頃だった。
 

鈍感な自分に、少し腹が立った。

今日、ミエロはいつものように、私を強引に歌わせたりしなかった。

だから彼が『歌え』と言ったのは、理由にかこつけて私の歌が聞きたかったからではなく、

『元気を出せよ』という意味だった。

どうしてすぐ分からなかったのだろう。
 
私は主のいない部屋に、取り残されてしまった。
 

お喋りをする相手がいなくなってしまうと、余計に部屋は静まり返っているように感じた。

寂しい。

それに、いらない事ばかりを考えてしまう。


(私は、恋をする事を恐れている……違う、嫌っている? 

それに、人を愛するとか、

そういうものを汚いと思ってしまっているような気がするのは、どうしてだろう……?)


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