“俺様”大家の王国
(なんていうか、変わった子だよなぁ……)
とにかく、奈央は真面目だった。
そして変に、義理を通そうとする。
行動にも言動にもどこかしら、むかし堅気なところがあるのだ。
でも、それを不自然には思わなかった。
彼もまた、そういう世界に身を置いていたからだった。
ただそれが、特別な階級でない奈央の性格だという事が、不思議なのだった。
十郎はそのうち、奈緒の事ばかりが気になりだした。
だが、彼女になんと話しかければいいのか分からず、いつも簡単な会話しか出来ないのがもどかしかった。
……口は、うまいはずなのに。
どんな取引先との会議でも、それほど緊張しなかったのに。
ましてや相手は女の子一人。
それなのに、どうして自分はこの子に限って、
言いたい事がうまく伝えられないのだろう……?