“俺様”大家の王国
拓海が、冗談めかして言った。
「俺なんて気付かずに、初対面でセクハラやらかしたよ。
大丈夫かな。後で訴えられたりしないかな……」
すると、ヨシが柄にも無く大声を出した。
「あー! そういえば、歓迎会やってない!
ジューロー前に言ってたよな。
奈央ちゃんが無事に探偵から逃げ切って、パレスに戻ってきたら本格的に歓迎会やるって!」
「言われてみたら本当だ! やってない!
てか、また新しく入居者来ちゃったぜ?
結局、企画倒れかよ」
「はは……じゃあ、今すぐ二人とも呼んできて祝うか?
題して『入居おめでとう・ご近所同士、仲良くしましょうやパーティー』……」
「奈央ちゃんはともかく、小林悪魔だけは勘弁してくれってマジで!
俺、本当に犬嫌いなんだよ!
想像しただけで、軽く貧血起こせるんだぜ!」
「何だそれ! あはははは」
二人は、ひとしきり騒いで馬鹿笑いをした。
「………」
「………」
「………で?」
「『で?』、って……」
ヨシが缶に口を付けながら言った。
「……諦めるのか、お前は」
「ん……」