“俺様”大家の王国
「ムダムダ。第一、今日はそれを愚痴りに来たんじゃなかったのか?
素直にゲロっちまいな」
ヨシが拓海の頭を、無遠慮にぱしぱし叩いた
拓海はテーブルに突っ伏したまま、やっと答えた。
「……相手が十郎じゃ、敵いっこないよ……」
「ははっ。多分、あの変な態度も恋煩いだろうからな」
「……恋煩い? あの女ったらしが?
そりゃまた、随分とピュアな事だな……」
「まあ、……その辺の事情はよく分からないでもねえけど、大体の想像はつくぞ。
十郎は、本気で恋をしてるんだろう」
「ふむ……」
「……っていうかさー、何お前……気になる子にセクハラは出来る癖に、
素直に付き合ってとか、そういう事は言えないわけ?」
「……俺さあ、口より手のが正直みたいで」
「あははは馬ー鹿っ!」
「……そう、そこなんだよ。何か、あれが駄目だったっぽいんだよなー……。
ノリとか、雰囲気でだんだん仲良くなれればいいと思ってたんだけど、
あの一件以来、常に警戒されてるっぽくて……」