“俺様”大家の王国
 


青白い電燈に照らされて、彼の目の下にしっかりめのクマができているのに気付く。

眠っていないのだろうか。


だから彼にとっては、まだ今は『こんばんは』なのだろうか。


「あの……」
 
喋りかけた、その刹那。
 

私は十郎さんに手を引かれた。

彼の胸にとん、と体を預ける形になる。
 

いきなり抱き締められて、脳が停止する。

ややあって、それまで忘れていたように、ドアが閉まる音がした。



(……あったかい……)
 


私の体はどこもかしこも冷え切っていて、十郎さんの触れている部分が、やけにじんわりとあたたかく感じた。


――どれくらい、そうしていただろうか。

目を閉じて、まどろみかけそうになった頃、ようやく十郎さんが言った。




「色々と……すみませんでした」


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