“俺様”大家の王国



何に対しての謝罪なのか、よく分からない。


でも今は、冷静にそんな生意気を言う余裕など無かったので、素直に頷く。


「僕、奈央さんにいっぱい、隠し事をしていたんです……」


「……知ってます」
 

何度訊こうとしても、いつだって必ずはぐらかした。
 

分からない事が悔しくて、もどかしくて、


でも真実がもし恐ろしいものだったらどうしよう、なんていうふうにも考えてしまって、結局追究を諦めた……。




「色々迷ったんですけど……さっき、やっと決心が付きました。


聞いてくれますか?」
 

ここまでしておいて、聞かないという選択肢は無い。


相変わらず、回りくどいなぁと思う。
 


沈黙を『Yes』と受け取ったのか、彼は続けた。



「僕の本当の名前は……」


< 507 / 534 >

この作品をシェア

pagetop