“俺様”大家の王国
考えてみれば私はすっぴんどころか、泣き腫らしたような顔で、
そもそも髪はめちゃくちゃに寝癖が付いていて、ひどい格好だった。
しかし、そこは十郎さんも同様だ。
こちゃこちゃに皺の付いた上着とズボン。クマ。
寝癖は私以上に、ひどい有り様だった。
「――『イザマグループ』って、聞いた事ありますか?」
「ええ、確かCMか何かで……」
車だっただろうか。
電化製品だっただろうか。
あるいは、何かのスポンサーとしてか……。
とにかく、日本人なら誰でも一度は耳にした事のある言葉のはずだった。
「――って、え……まさか……」
「あれ、僕の家なんです」
「う、嘘ぉっ!
だって、十郎さん一度もそんな事……!」
「隠してましたから」
「……そうでしたね。
……じゃなくて、どうして隠していたんですか?」