“俺様”大家の王国



たっぷりと、時間が経過した。
 

心配になって覗き込んで見ると、彼はぎゅっと目を瞑っていた。
 

そして、もしかして十郎さんは、眠ってしまったんじゃないのかと思った頃に、すぅっと瞼を開いた。



「………十郎さん?」


「はい……」
 

彼は、何かを言おうとして、口を動かした。

けれども、荒い呼吸の音が響くだけで、一言も発することが出来ない。


「大丈夫ですか?」
 

何を、こんなにためらっているのだろう。


よほど、言いたくない事なのだろうか……。


「……そんなにもつらい事なら、言わなくていいですよ。


あの、……私になんか、教えてくれなくていいですから……っ」


「いえ、違うんです……違うんです……。

そういうんじゃなくて……えと……」
 

十郎さんの顔が、やけに赤い。
 


けれども、深呼吸した彼の口から、ほぅ……、と漏れた息が、優しい。


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