“俺様”大家の王国
まるで、会えなかった時間の気まずさなど存在していなかったかのように、会話は弾んだ。
寒い部屋で、身を寄せ合いながら、お互い延々と喋った。
幸い、この日は土曜日だったので、学校の心配は無かった。
十郎さんのスケジュールは、知らなかったけど。
私は、改めて今までの彼の行動を思い起こしていた。
……こんなにも積極的にアプローチされていたのに、素直に心を開かなかった自分に、正直驚く。
だけど、それには私なりの理由もあったのだ。
まずは、それから話す事にした。
「――すべての始まりは、母なんです……」
私の母の名前は、紅原綾子という。
多分、日本で知らない者などいないだろう超・大物芸能人さまなのだ。
……娘の私が言うのもおこがましいが、事実である。
だけどそれで、私が良い思いをした事など、ただの一度も無かった。