“俺様”大家の王国
今日は来る、今日は来ると、玄関の前で待っていて、そのまま待ち疲れて眠ってしまった事もあったらしい。
けれども、とうとう母は、私を迎えに来なくなってしまった。
「……義子の仕事は、忙しいからねえ……」
祖母が気を遣ってくれて、申し訳なさそうに言うのがたまらなかった。
母は、一向に現れなかった。
それなのに、毎日テレビを点ければ、絶対にその中に母はいるのだった。
――笑ってる……。
ブラウン管の向こう側の母は、笑っていた。
幼心にも、かなり傷付いた。
もちろん、テレビの中の話だ。
笑顔なんて、大前提ですらない。
もし朝の情報番組などで、しかめっ面をされたら、視聴者はたまったものじゃないだろう。
だけど、それが理解出来なかった。
理解したくなかった。
一番会いたい人の姿を毎日見る事が出来るのに、こんなにも遠いということを……。