“俺様”大家の王国
 


そして、丁度その頃から、私の習い事の数は増えていった。
 

それまでピアノ、クラシックバレエ、習字だけだったのだが、そこに水泳や英会話なども加わった。

(今では『犬かき』くらいしか出来ないが、当時は真剣だった)
 


もちろん、友達と遊ぶ時間は、ぐっと減った。


週に二回くらいだったかもしれない。


でも、それが普通だと思っていた。


成果を上げれば、時々母が思い出したように寄こす電話の際に、褒められる事もあった。

何の疑問も持たずに、それが正しい事だと思っていた。



「ただ、学校でも困った事は、あったんですよ……」
 

母は、いじめっ子の役で華々しいデビューを飾った。


そして、それ以降も、『紅原綾子イコール悪役』のレッテルは、付いて回った。


キャラ作りというのは、芸能界を生き残る上での手段であるし、それが受け入れられれば、もちろん有利だろう。
 


けれど、『悪役の娘』はどうだろう。



毎週学校で、「昨日、奈央ちゃんのお母さん、人殺してたね」と言われる私は……。


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