“俺様”大家の王国
「さらっと流せてしまえば、良かったんですけどね……。
残念ながら私、そこまで器用じゃなくて。
あ、もちろん今じゃ慣れっこですよ?
ただ、あるものを除いて……」
私が寂しがっている事を知った祖父母は、母の出演している番組を、
とにかく録画しまくって、ビデオテープに撮りためた。
そして、私が帰って来る夕食時や、お風呂に入るまでのちょっとした時間などに、延々とそれを放映していたのだった。
――事件は、平和な夕食時に起こった。
つまり…………ラブシーンである。
「ああいうのがお茶の間に流れると、家族全員が気まずくなるじゃないですか……。
だけど私の場合、更にそれが身内だったんですよ……」
気まずいどころの話では無かった。
当時の私は、画面の中で行われているそれが何なのか理解出来ず、また、唖然と固まってしまった祖父母達は、
テレビの電源を落とすという行為も忘れてしまったようで、ただただ画面から目を逸らし、置き物のように停止してしまった。