“俺様”大家の王国
「結果オーライじゃないですか」
それまでじっと話を聞いていた十郎さんが、しれっと言う。
「……誰のせいだと思ってるんですか」
若干むくれながら言うと、彼は私の手を取り、薬指に煌く指輪をかざして、目を細めた。
「僕」
「……もう」
少し前まで、彼が自分にちょっかい出して来るのが、何より悩みの種だった。
だけど、最近十郎さんの様子が変わって、しかも徹底して会えなくなって、
何だか胸の辺りがぽっかりと虚しくなった事に気付いたのだ。
それなのに、ミエロや拓海さん達はいつも通りで、それが余計に怖かった。
十郎さんが本当にいなくなってしまったようで、急に怖くなった。
小林君に迫られて、やっと理解した。
――私は、恋をしていた。