“俺様”大家の王国
それを認めてからの私は、長い時間をかけて、
恥と自分の中の新しい気持ちを、天秤にかけた。
何でも、決めるのには踏み出す勇気がいると思う。
自分に足りないのは、それだった。
「だからもう……大丈夫ですから」
そこまで話すと、十郎さんはわざと「大丈夫って、何が?」と尋ねてきた。
「な、何がって、……その……っ」
突如として、顔から火が出る。
とんでもないことを口走りそうな気がして、慎重に言葉を選んだ。
「こういうこと、です……」
私は、手をきゅっと握り返した。
十郎さんが、驚いたように――しかし、嬉しそうに目を見開いた。
そして、不意に顔を近付けてきたので、慌てて制止した。