“俺様”大家の王国



「ちょ、っと待った! あの、心の準備が……!」
 

すると、彼は怯みもせずに、私の頬にチュッと口付けた。


「……ぎゃぅ」


「なに鳴いてるんですか」
 

思わず喉の奥から野良猫みたいな声が出て、からかわれた。
 

近い、近い、距離が近い……!
 
近いどころか、密着している。
 

今更そんな事に気付いて、更に顔が赤くなった。
 


私の様子をまじまじと観察していた十郎さんが、急に目を閉じた。


「………?」

「………なんか」

 
言いながら彼は、私の後ろから腕を回し、背中を壁に預けるような体勢で、毛布をきっちりと体に巻きつけ直した。



「……安心したら、眠くなっちゃったな」

 

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