“俺様”大家の王国



そして彼は、そのままくうくうと、寝入ってしまった。
 

ここが雪山だったら、確実に死ぬくらいの早さで。


(……ちょっ、このまま……)
 

動揺しつつも、あまり身動きが取れない私は、何とか頭を動かして彼の様子を窺った。


振り向いた瞬間、十郎さんの顔があってひゃっとなる。

(改めて見ると……すごいクマ)
 

きっと彼は最近ずっと、眠れなかったのだろう。

……そんなにも、仕事が忙しかったのかな、と思った。


(だとするとまあ、このくらい、仕方ない、のかな……)
 

この状況を、なんとか自分に言い訳して納得してみる。


思いの外ぎこちなくて、やっぱり自分が照れまくっているのが分かった。
 

不意に、指輪がきらりとなった。


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