“俺様”大家の王国
犬と喧嘩……?
一体何が起こったのだろう。
しかし、私の心配をよそに、
「この指輪、陛下からだね……?」
「は、はい……」
小林君は、鎖を軽く引っ張って指輪を手に取ると、内側に彫られた私の名前を見て、
「ふん……」
と短く頷くと、
「……ま、簡単に諦めるのも癪だし、人のものかっ攫うのもいいよね♪」
「え、何の話……」
鎖を引き寄せられ、互いの顔が近付く。
(な、な、な……!)
目をぎゅっと瞑ると、覚悟していた感触は到来しなかった。
彼は、私のほっぺたに、自分の頬をきゅっと当てているだけだった。
「ふふ……驚いた?」
すぐ耳元で、いたずらっぽく彼が言う。
「あはは、ほっぺた柔かいね~……」