“俺様”大家の王国



引っ越してきてから、泣くのは初めてだった。

だけど、どうせなら気が済むまで泣いてやろうと思った。
 
ここには、何かあったのかと心配して心を痛める祖母も祖父もいない。

今までのように、風呂場や自分の部屋で、

こっそり声を殺して泣く必要はないのだ。
 

だから……気が付かなかった。
 

私の後を追って来た人間がいた事に。
 
彼が、急に扉を開けるまで。



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