“俺様”大家の王国
「……すみません」
泣き顔を向けると、十郎さんは悲しそうな顔をして、俯いた。
「……どうして謝るんですか?」
私は、嗚咽混じりの声で尋ねた。
完全に鼻声になっているのが、情けない。
「僕の不注意です。
彼は……拓海は、悪い奴じゃないんですが、
結構平気でああいう、下世話な事をしたり言ったりするもんですから……」
とすると、さっき身体に触れたのは、
やっぱりわざとだったんだろうかとか、
どうでもいい事を考えながら、
ただ「そうですか」と答えていた。