可愛い小悪魔くん
「…ヒクッ…っ」
走りながらあたしは泣いていた。
涙が止まらなかった。
あたし…
こんなに千葉くんの事…
好きだったんだ…
でも、諦めなくちゃ…。
千葉くんの幸せを願わなくちゃ…
ダメだもんね。
あともう少しで玄関に着く……
そう思って走っていた。
「…きゃっ」
誰かに腕を掴まれて、後ろに倒れそうになった。
あたしは、とっさに目をギュッとつぶった。
倒れたのに体は痛くない…。
むしろ、お姫様だっこをされてる感じがした。
あたしはゆっく目を開いた。
「ち、千葉くん…!」
あたしの腕を掴んだのは千葉くんだった。
ガラガラ…──
千葉くんは何も言わずに近くの教室にあたしをつれて行った。
ここ…
何の教室…?
古そうな本がたくさん置いてある教室だった。
「千葉くん…。どうしたの?」
いつの間にかあたしの涙は止まっていた。
千葉くんはあたしをゆっくりおろした。