あたしだけの王子様
『・・へ?』
先生にバレないように、小さな声でもう一度聞き返してみた。
『だから、ヒマなら俺と喋んないかって聞いてんの。
俺だってヒマだしさ~・・』
・・あれ?今、少し口調が荒くなった気がしたけど・・気のせい??
『ヒマなのは分かった。でも、なんでわざわざ前の席の人に話しかけるの?
横の席の方が喋りやすいしいいと思うよ?』
後ろに向きなおして、少し得意げに佐伯楊に言ってやると、佐伯楊は少し寂しそうに
『アンタは俺に興味なさそうだから、いい友人になれると思ってさ』
と言ってきたから、なんだかかわいそうになってしまった。
『・・そーゆーことなら・・』
そう答えると、佐伯楊は表情を明るくして、『ありがとう』と笑って見せた。
それが、芸能人スマイルとは違うように見えたのはあたしだけ・・・・?
『・・ねえ、杏里って呼んでもいい?
俺のことは楊でいいからさ』
『うん。別にいいよッ
じゃあ、あたしも楊って呼ぶようにする』
・・なんだか、不思議な気分だ。
いつもはテレビとか雑誌で目にする楊が、今あたしの目の前にいて、あたしのことを杏里って呼んで、あたしと喋っているんだ・・。