Stand by・・・
今朝寄った土手のふもとで、車を止めた。

車から下りると、今朝と変わらず花見客たちでごった返している。

事故があった直後なのに、呑気なことだ。


「ここ?」


やはり、おれの隣から声が聞こえた。


「ちょい生々しい話になるけどさ・・・今朝、ここをおれが通りかかったとき、事故があったんだ」

「事故?」


おれは、事故現場の方を指さした。

さすがに車は片付けられていたが、急ブレーキをかけたときにできたと思われる、地面に残ったタイヤの黒い跡や、電柱についているいくつもの傷が、事故の激しさを物語っている。


「乗用車が電柱にぶつかってて・・・。周りに人がいっぱいいたから、すぐ救急車が呼ばれてたけど・・・」

「それが私の可能性が高いってことかぁ。てか桜きれいだねー!」


・・・おれは気を使って言葉選んでるのに、刹那の方はまるで気にしていないようだ。

まるで他人事のように、のほほんとしている(のだろう)。


何で、自分が死んだかもしれない場所でこんな明るいんだか・・・


おれの方がモヤモヤした気分になってきていた。
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