Stand by・・・
「私だ・・・」

おれは声の方を見た。電話口の友人の声も聞いていたのだろう。

「今の連絡があった子・・・私だ!やばい、全部・・・全部思い出しちゃったよ!」

能天気だった刹那の声が、泣き声になっていた。

「思い出した・・・ぶつかる瞬間の怖かった記憶・・・気付いたら、すごいスピードで電柱が迫ってきてて・・・私、死んじゃうんだ・・・死んじゃうから幽霊になってるんだ・・・」

それから刹那の声は嗚咽に変わった。

恐らく彼女は、その場の座り込んで泣き崩れているのだろう。


刹那・・・


おれは呆然としながらも、彼女の笑顔を思い出した。

弾けるように明るい笑顔。

公演が終わったあと、いつも舞台の上で挨拶するときに、手を振りながら観客に振りまいていた。

ふと、目が合った瞬間、彼女の明るい気持ちがおれの中に優しく入ってきた。




その彼女が・・・




死ぬのか?








おれの頭の中で、プツンと何かが弾けたような気がした。

「死なせねぇ!」

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