Stand by・・・
ドスン!

ふいに鈍い音とともに悲鳴が聞こえて、おれは振り向いた。

土手の下の道路で今まさに、車が電柱に突っ込んだようだ。

電柱がバンパーにめり込み、車体が押し潰されそうになっていた。

電柱も傾いていて、激しい衝突だったことがわかる。

歩いていた中年の女性が駆け寄って車の中を覗き込み、近くにいた青年が携帯を慌しく取り出していた。救急車を呼んでいるんだろう。


うわ、大丈夫かよ・・・


近くの家からも人が出てきて、あっという間に10人近くも集まり、現場を囲んだ。

おれも気になったが、他人の不幸をあえて見物に行くのも悪い気がする。

あれだけ人がいれば何とかなるだろう。

おれは、再び歩き出した。





今思えば。

おれが何の気なしにこの土手道を通ったことから、全てが始まったんだ。

< 5 / 53 >

この作品をシェア

pagetop