Stand by・・・
そんな刹那をまっすぐおれは見つめた。


おれの中は刹那でいっぱいになっていた。



おれの眼差しに気付いた刹那も、ふとおれを見つめた。



素直な自分の気持ちを出せばいいんだ。
彼女が教えてくれたこと。おれはそれを実行すればいいだけ。


迷いや恐れはなかった。

おれは刹那の手を掴んで引き寄せ、ほんのり赤くなっている頬に優しく口をつけた。

高嶺の花だった彼女との距離が、その瞬間、ゼロになった。




おれも刹那も吸い込まれるように互いを見つめた。


光を浴びて輝く瞳。キュッと結んだ薄い唇。さらに赤くなった頬。


おれの気持ちは、完全に刹那で埋め尽くされた。



ふいに刹那が、おれの頬をつねった。



言葉がなくても伝わる。どういう意味なのか。




刹那は、ゆっくりと目を閉じ、そのかわいい顔をおれに向けた。




刹那・・・・





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