夢月
コンコン。乾いたノックの音が響く。
「どうぞ。」俺は心療内科の先生室?の扉を開く。

「本間亜希君ですね?久しぶりと言うべきかな?元気になったね。」
俺は、子供の頃。愛利と同じ心臓病だった。俺は、この先生に治療を受けていた。幸い。俺は、完治したらしい。だが、愛利は…

「君なら解ると思うが、愛利さんの状態は思わしくない。ちょっと、悪い状態だ。」 やはりな…

予感はしてた。
「分かりやすく言えば、後1年持つかどうか。」


ついに来たのか。この時が……。

「ご家族より先に、君に知らせておいた方がいいと思ってね。愛利さんは、君が心の支えだから。最終的に、決断をするのは愛利さんだが、治療を続けるのか、治療をやめるか。考えておいて下さい。」

「移植は?出来ない?」
「残念だが、日本では15歳以下の子供に心臓移植は認められてない。残念だけど。今は無理だ…」

キメラ…か。
移植した人を医学用語でそう呼ぶらしい。
妹がキメラと呼ばれるのも、嫌だな。

「解りました。愛利に聞いてみます。」

「失礼します。」



俺は、泣いた。病室に戻るさ。泣き止んだらちゃんと戻るから。
「亜希君。」
さっきの看護婦さんが、抱きしめてくれた。「泣きなさい。愛利さんの前では笑っていられるように…」

俺は、どうしたいのだろう。
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