げんせんかんにっき

けむり

 
 
僕と君は煙草が好きです。
吸っていると煙突になった気がして好きです。
 
陸橋の上で、
下には車がたくさん走っていて、
それで僕と君は煙草を吸っていました。
 
本当にたくさんの車
バイク
自転車
陸橋に登ってきて降りていく人々
陸橋に登ってきて飛び降りていく人々
みんな忙しそうにしています。
 
 
一人のおじさんが陸橋に登ってきました。
 
 
おじさん「そこから何が見えるかい」
 
君「けむり」
 
僕「うん。煙みたいな人だ」
 
おじさん「はっはっは。ちょっと隣、失礼するよ」
 
 
おじさんは君の隣で煙草を吸いはじめました。
 
 
君「ねえおじさん」
 
おじさん「なんだい」
 
君「下を走ってる人たちって、どうして下を走っているの」
 
おじさん「みんな忙しいからだろうなあ」
 
君「ふうん」
 
 
 
君「おじさんは忙しくないの?」
 
おじさん「わしはもう忙しくなくなるんだ。ちょっといままで忙しくしすぎちゃってな、もう疲れたんだ」
 
君「ふうん」
 
おじさん「君達は、おじさんみたいになっちゃいけないよ」
 
君「どうして?」
 
 
 
おじさんは何も言いませんでした。
 
 

僕「もう帰ろうか」
 
君「そうだね」
 
 
 
僕と君は陸橋を降りて帰りました。
 
 
 
 
帰り道、君と僕が陸橋を振り返ると
ちょうど
さっきのおじさんが忙しい人々の中に飛び降りたところでした。
 
 
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